フリーランスエンジニアの準委任契約で、月額単価はどのくらいが相場なのか。参考レンジと、そこから手取りを考えるときの見方を整理します。
単価は案件によって大きく変わるため、この記事では金額そのものより「何で決まるか」に重点を置いています。相場を知ることより、自分の単価が今どの位置にあるかを判断できるほうが役に立つためです。
結論を先に書くと、単価を左右しているのは経験年数そのものよりも「どこまでの範囲を任せられるか」です。そして、その範囲が案件先に伝わっているかどうかで、同じ経験でも提示額が変わります。
準委任の月額単価のめやす
経験年数別の参考レンジは次のとおりです。単価はスキル・案件・地域で大きく変わるため、あくまで目安として見てください。
| 実務経験 | 月額単価の目安(税別) | 担当工程 |
|---|---|---|
| 1〜3年 | 〜55万円 | 詳細設計〜実装、単体テスト 指示された範囲を確実に進められることが前提になります。 |
| 3〜5年 | 55〜70万円 | 基本設計から実装、結合テストまで 一人称で工程を回せるかどうかが分かれ目です。 |
| 5年以上 | 70万円〜 | 要件定義・基本設計を含む上流 技術選定やレビューを任される領域に入ります。 |
| ハイスキル・PM | 80万円〜 | アーキテクチャ設計、チームマネジメント 希少スキルや、プロジェクト全体を見る役割が該当します。 |
同じ経験年数でも、担当できる工程の広さや希少なスキル(クラウド設計、SRE、データ基盤、PMなど)があると、レンジは上にぶれます。
職種によっても相場は違います
経験年数が同じでも、職種によって単価帯には傾向があります。
| 職種 | 単価が上がりやすい条件 |
|---|---|
| バックエンド | 設計から入れること、性能・信頼性まわりの経験 実装のみだとレンジの下寄りになりやすい領域です。 |
| フロントエンド | 設計の共通化、パフォーマンス改善、UI設計への関与 |
| インフラ・SRE | 構築と運用の両方、IaCによる自動化の経験 構築だけ、運用だけより、両方見られると評価が上がります。 |
| データ基盤・DBA | 移行の実績、規模(件数・台数)を示せること |
| PM・PMO | 管理した規模(人数・期間)と、調整した相手の広さ |
共通しているのは、「作業ができる」より「範囲を任せられる」ほうが単価に反映されるという点です。
「単価」と「手取り」は違う
注意したいのは、単価がそのまま手取りになるわけではないことです。会社員と違い、フリーランスは次のものを自分で負担します。
| 負担するもの | 内容 |
|---|---|
| 税金 | 所得税・住民税・(課税事業者なら)消費税 住民税は前年の所得に対してかかるため、収入が下がった翌年に負担が重く感じられます。 |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 会社員時代の労使折半がなくなるため、負担感は増えます。 |
| 経費・その他 | 機材、通信、会計ソフト、各種保険など |
手元に残る割合は、所得・控除・課税事業者かどうかで大きく変わります。一律の目安を出しにくい領域なので、金額を知りたい場合は、実際の条件で試算するのが確実です。
感覚をつかむだけであれば、まず「単価から引かれるものが何か」を把握するところから始めるとよいです。上の3項目を自分の条件に当てはめて洗い出せば、比較の土台はできます。正確な税額の計算や節税の判断については、税理士への相談をおすすめします。
案件を比較するときは、単価だけでなく手取りベースで並べると判断を誤りにくくなります。
もうひとつ会社員と違うのが、稼働しなかった月の収入がゼロになる点です。案件と案件のあいだが空けば、その期間は収入がありません。
そのため、年収で考えるときは月額単価 × 12か月ではなく、空白期間の可能性を織り込んでおく必要があります。単価が高くても間が空きやすい働き方より、単価が少し低くても切れ目なく続くほうが、年間では上回ることがあります。
案件を切らさない動き方については案件が途切れる原因と、切らさない5つの準備にまとめています。
単価以外に、条件で見るべきところ
月額単価が同じでも、条件によって実質的な収入は変わります。案件を比較するときは、次の項目もあわせて確認してください。
| 確認項目 | なぜ見るか |
|---|---|
| 精算幅 | 140〜180時間など、想定稼働時間の範囲 同じ単価でも幅が広いほど、時間あたりの単価は下がります。 |
| 超過・控除の単価 | 精算幅を超えた/下回ったときの計算方法 |
| 支払いサイト | 月末締め翌月末払いなど。参画から入金までの期間 サイトが長いと、開始直後の資金繰りに影響します。 |
| 契約期間と更新 | 3か月更新が一般的。更新の判断時期も確認しておく |
| 出社の頻度 | 交通費の扱いと、通勤にかかる時間 フルリモートと週3出社では、実質的な負担が変わります。 |
特に精算幅は見落とされやすい項目です。「80万円/140〜180時間」と「80万円/160〜200時間」では、同じ単価でも時間あたりの金額が変わります。
単価が決まるまでに、何が起きているか
提示される単価は、案件先が「この人にいくらまで出せるか」を決めた結果です。その判断は、次のような順番で行われます。
- 1. 案件の予算枠 … プロジェクトごとに、ポジションの上限がある程度決まっています
- 2. 求める範囲 … 実装だけでいいのか、設計から任せたいのかで枠内の位置が変わります
- 3. 候補者の情報 … スキルシートと面談から、任せられる範囲を判断します
ここで重要なのは、1の予算枠は基本的に動かないという点です。交渉で大きく上がることは多くありません。動くのは2と3、つまり枠の中でどの位置に置かれるかです。
そして枠の上限に近づけるのは、任せられる範囲が広いと判断されたときです。「実装はできる」より「設計から入れて、運用も見られる」ほうが、同じ案件でも上に置かれます。
もうひとつ、商流の深さも単価に影響します。案件先とエンジニアの間に会社が複数入ると、そのたびに手数料が乗るため、同じ案件でも手元に届く金額が変わります。案件を比較するときは、間に何社入っているかを聞いてみると判断材料が増えます。
同じ経験でも単価が変わる理由
ここまで経験年数と職種で見てきましたが、実際には同じ経験年数でも提案される単価に差が出ます。
理由は大きく2つあります。
- 担当できる工程の幅 … 実装だけか、設計から入れるか、運用まで見られるか
- それが伝わっているか … 実際にやっていても、スキルシートに書かれていなければ判断材料にならない
案件を紹介する側から見ると、後者で損をしている人はかなり多いです。運用保守まで担当していたのに書いていない、障害対応で一次切り分けまでやっていたのに書いていない、といったことが普通に起こります。
本人にとっては当たり前の業務でも、書かれていない工程は「やっていない」ものとして扱われます。これは実力の問題ではなく、単に記載の問題です。
単価を上げるためにできること
スキルアップは前提として、それ以外に効くのは次の順番です。
- 1. 書き漏らしを埋める … 担当した工程を漏れなく書く。工程別の書き方を参照
- 2. 成果を具体にする … 「改善した」ではなく、何をどう変えたかまで書く
- 3. 担当範囲を広げる … 今の案件で、隣の工程に関わる機会を取りにいく
1と2は今すぐできて、しかも効果が出るのが早いのが利点です。経歴を積み直す必要がありません。
ただし、盛るのとは違います。やっていないことを書くと面談で崩れますし、参画後に食い違いが出ます。あくまで、やったことを正確に書くという話です。書き方は経験を案件に伝わる言葉に翻訳する書き方と単価を上げるスキルシートの見せ方にまとめています。
まとめ
- 準委任の月額単価は、経験5年前後で70万円〜が一つの目安(税別・案件により変動)
- 単価=手取りではない。税・社会保険・経費は自分で負担するので、手取りベースで比較する
- 単価が同じでも、精算幅・支払いサイト・出社頻度で実質は変わる
- 同じ経験年数で差が出るのは、担当工程の幅と、それが伝わっているか
- まずやるべきは書き漏らしを埋めること。経歴を積み直すより早く効く
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